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・『放送禁止歌』  森 達也  2003


なたは、放送禁止歌を聞いたことがありますか?
テレビやラジオが放送しない(したがらない)歌があります。

本書は1999年5月23日深夜フジテレビで放送されたドキュメンタリーを下地に書籍化したモノ。番組自体は作りが荒いしザッピングで指が止まるというものではない。でも、本書を読んだ後は必ず立ち止まり観たくなる番組です。

かつて(現在も)TVの箱の外にはもう一つ箱がありました(ある)。内側の箱の名前はプラスチック、外側の箱の名前は”自主規制”!歌詞に人を傷つける恐れのある”ことば”がある。誰かが傷ついたらしいぞ、苦情があったらしいぞ。ホントと噂。放送局の人達は考える。傷つけたくないし、それ以上に「傷ついたぞ!!」と怒られたくない。どうしよう?そうだ!そんな面倒な歌は放送しなければいい。リストも作っておこうよ、同僚や後輩たちが後々困らないように。リストの題名は”放送禁止歌”。すると時が経つにつれ、リストに載っている歌は理由を考えることもなく、ただ箱から弾かれていく。そして箱からはその歌が聞こえなくなる。

さまざまな”放送禁止歌”がある。また聞きたい歌がある、「竹田の子守唄」「手紙」「イムジン河」などはあなたに是非聞いてほしい。「悲惨な戦い」「スキンシップ・ブルース」「放送禁止歌」などはウンコです(ごめんなさい)。”放送禁止歌”になったからこそ残ってしまった歌もあるのですね。

本書ではそもそも”放送禁止歌”などないこと、それは放送自主規制歌であることが徐々に明らかになっていく。著者の森達也氏は考える。なぜ自主規制したのだろう。「いや~あの歌を放送したりすると解放同盟がうるさいんだよ」みたいな雰囲気があることを知る。森達也氏は解放同盟のA氏に会いにいく。

「糾弾?この唄に?同盟として正式に抗議したことは、たぶんないはずです」A氏は否定する。
「・・・・・・もし糾弾などしていないのなら、メディアはどうしてこんな事態に陥るのでしょうか」森達也氏は聞く。
「・・・・・・皆が自分で考えていないからでしょう。マニュアルや他人の判断を鵜呑みにして、自分自身で考えるという当たり前のことがなされていない。特にマスメディアの方々に対して、私はその思いを強く持っています」
「メディアが自分の言葉で考えて、そしてそのうえで必要と判断した表現に対しては、解同は理解を示してくれますか」
「もちろんです。自分の言葉で考えなくてはならないことは私たちも同様です。大切なことは一つひとつの言葉に条件反射で反応することではなく、その文脈を正しく捉えることです。」

森達也氏は言う
《タブーが生まれる背景には時代の必然がある。その意味で「規制」は不必要とは僕は思わない。しかし、そのあり方に自覚的になるだけで、世の中の見方がずいぶん変わる。少なくとも、形骸化していた規制を10年以上引きずるような愚行を続けることはなくなるはずだ。》

時と共に差別がうまれ差別語ができる。2009年現在なら、ニート・派遣社員・世襲議員などが将来なるかもしれない。特に世襲議員は、その人の能力に関係なく侮蔑的意味合いを含めて使われている。「世襲議員はだから駄目なんだ」って言うヒトは、だからダメなんだ。

発言する側に差別的意図はなくても、受けて側の解釈で不快に感じることがある。『差別表現の検証』(西尾秀和)に次のような例があげられている。
《昨日、私は仕事の上で初歩的なチョンボをしてしまった。入社10年にもなろうというのに恥ずかしい限りだ。》という文について、「在日コリアン人権協会」のある幹部はいう《「この文章自体は別段、差別でもなんでもない。だけど私たちは、”チョン”のつくことばはいやなんだ」》と。”チョンボ”は中国語であって、”チョンホー””チョンボー”などと発音され、カン違い・失敗といった意味らしい。

もう一つ例を出してみる。『実例・差別表現』(堀田貢得)によれば、”ハーフ”という表現はイギリスでは差別表現であり、”ダブル”とすべきである、と抗議をされた団体の例が出ている。無理やりに”チョンボ”の例と重ねれば、”ハーフマラソン”や”ニューハーフ”も使うときは配慮がいりそうである。飛躍しすぎですか?

『差別用語の基礎知識’99』(高木正幸)にはこうある。
《もともと「差別語」といったものはないし、どんな言葉も自由に使われるべきなのが原則である。抗議、糾弾さるべきは、単なる言葉の問題でなく、それこそ水平社宣言決議がいうところの「侮蔑の意志」の「表示」であるかないかである。そして、その侮辱の意志の表示か否かの判断が、一方的になされてはならない。》
発言するものは、発する”ことば”の意味を常に意識し、差別されるものへの配慮を忘れるべきではない。知らないものは忘れようがないから、まず差別語を知る必要がある。差別されたとして抗議するものは、発言者に差別の意志があるかないかを判断する冷静さが必要。どちらの立場にだってなるのだから。

日垣隆氏は《何でもかんでも差別語だと言って避けると使う言葉がなくなる、などと平気で言う人もおりますけれども、そのような人は語彙が貧困なだけでしょう。》と、キツイおことば。

テレビ番組に過激なコメントを期待されて出ている人がいる。その人が叫ぶ「正気かこの●●●!!」「おんどりゃ●●」「日本から出て行け●●●●」・・・。収録なら”ピー”が入るし、生番組ならアナウンサーが「先程不適切な発言がありました。おわびします」などとおっしゃる。教えてほしい、放送禁止語を使わなければ人を侮辱したり嘲ったりしてもいいの?たとえば、どこかの国の首相に「漢字が読めないんでちゅか~、一緒に小学校1年生の漢字をお勉強しましょうね~」はいいの?文脈で考えるとダメじゃないか。生放送ならまだわかるよ、でも収録番組で”ピー”入れるのどうなの。ピー・ピー言ってる人は、ほとんど同じ人だよ。ボクはこの人を”ピーちゃん”って呼んでいる。”ピー芸”などでは笑えない。

テレビなどでは新聞のラテ欄や番組の冒頭で、次のように言ってくれるとありがたい。「やらせがあります」「司会者がCM中に寝ています」「本日のコメンテーターはありきたりなことしか言いません」「コメンテーターは熟慮のうえ発言しています」「時間稼ぎのために”町の声”を聞いてます」・・・。こういう自主規制はありがたい。

第3章のデーブ・スペクターとの対話もいい、アメリカの自主規制について。6秒ディレイトを知っていますか?中国を笑えないですよ。デーブはただの寒いギャクタレントではなかった!

第4章もじっくり読んでほしい。放送禁止歌から部落差別問題へと切り込んでいく。本書を作った理由がここにある(たぶん)。そして本書を読み終わったら「竹田の子守唄」「手紙」を聴いてほしい。
 

・NONFIX 『放送禁止歌~唄っているのは誰? 規制するのは誰?~』 ニコニコ動画「小生どうが」
http://blog.livedoor.jp/kourick/archives/50690576.html
・歌 『竹田の子守唄』 赤い鳥 You Tube
http://www.youtube.com/watch?v=dgkxBG_cr9o&feature=related
・歌 『手紙』 岡林信康 You Tube 番組のエンディング
http://www.youtube.com/watch?v=ovxkY0HJLuk&hl=ja
・放送禁止歌案内 「カオスの本棚」
http://homepage2.nifty.com/bookbox/kinsika.htm
・森達也公式ウェブサイト
http://moriweb.web.fc2.com/mori_t/index.html
・忌野清志郎「夜のヒットスタジオ」←本当に最高のバカだった。
彼こそロックだ(2009年5月2日満58歳没)You Tube
http://www.youtube.com/watch?v=yfK3KLT9TwU&feature=related(02:12~)

■不必要に人を傷つけたり、周りに迷惑をかけないようにするために。
・堀田貢得『改訂版 実例・差別表現』 amazon/bk1

・高木正幸『差別用語の基礎知識’99』 amazon/bk1


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