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・『貧困の光景』 曽野綾子 2007 新潮社

にこうあります、

ほんとうの「貧しさ」を知らない
日本人の
精神の「貧しさ」を問う


著者がいう「ほんとうの貧しさ」(貧困)とは、《その日、食べるものがない状態》のこと。ボクの空腹感は一時的なものだけど、貧困地域の飢餓感は社会的、 経済的、かつ継続的状況なのだ。《とにかく地域全体に食べものがない。昨日もなかったし、明日も多分ないだろう。日本人の貧乏は、その家一軒だけの不運 の結果である。だから兄弟や、友だちが幸運なら、何とか飢え死にさせるようなことはしない。しかし飢餓は地域全体の瀕死の病状である。》、貧困地域の《中 央政府も地方自治体も(そんなものが名称以上に実体を持っているかどうか疑問だか)何らこうした飢餓を救済する方法も持たない。金も物も組織力も、何も 持っていない自治体と役人たちなのだ。》(P18)

この発言に対する反論は、間違いなく正論です。日本にだって派遣村や生活保護が受けられず餓死する人々がいます。しかし、そのような現状を否定しているのではないのです。著者が問 うているのは次のようなことなのです(たぶん)。あなたが友人から寄付を募って、派遣村や困窮している人々に差し入れをしようと考えたとする。苦しい生活の中からも、 みんなの善意で1万円の現金が集まった。そのお金でコンビニかそれともスーパーでお弁当を買って届ける。彼らのはにかんだ笑顔が見られるかもしれない。 しかし、彼らの困窮は今日で終わるわけではない。そう考えたあなたは、役所にどうにかしてくれと訴える、そしてわずかな希望を携えて、来るべき時に選挙権 を行使する。残念ながら政府を動かすことはできない、けれど少なくともあなたが集めた1万円は困窮者の1万円分の弁当になる。

★次にあなたは海の向こうに目を向けて、集めた1万円を外国の貧困地域に寄付しようと考えた。その1万円は貧困者のいくら分の食料になると思いますか?

著者は、海外邦人宣教者活動援助後援会(JOMAS)という小さな組織を作り活動を始める。友人から預かったお金を、確実に貧困地域の人々に届けたいと考 えたからだ。そこで現実を知る、《集めたお金を海外のどんな組織に渡しても、必ず一部は(それも非常に多くの部分を)盗まれる、つまり誰かのポケットに入 れられるという事実を知るようになっていた。そのようなお金の漏れを防ぐためには、海外で働く日本人の神父か修道女に預けて彼らの監視のもと使ってもらう 他はない》(P10)

《日本人の神父と修道女たちが、もししたい仕事があれば、私たちJOMASが必要なお金を払う。神父と修道女たちには、支払いは自分たちでしてもらい、決 して私たちが渡したお金を現地の司教などに渡さないように、なおかつ彼らは事業を行った土地にその後も在住し、故障なのどアフターケアーも必ず責任を持っ て行ってもらう、というのがその条件だった。》(P10)

盗まれたと警察に訴えても、そこでもまた金銭を要求される。

《日本人の考えるような近代的な警察組織が一応まともに機能する国は、先進国と中進国の一部だけ(中略)、貧しい国家の警察は給料だけでは家族を養っていけないから、どこかで闇のアルバイト、つまり汚職をしなければならないのである。》(P13)

・(あなたの1万円)=(困窮者の1万円)

・(あなたの1万円)-(窃盗)-(着服)=(貧困者の?円)

★実は、あたたの1万円からさらに引かれるお金があるのです。『
こんな募金箱に寄付してはいけない』(筑波君枝、青春新書)に詳しいが、何かを届けるには経費がいる。少し長いが引用します(記述箇所は物資の寄付の場合)。

《送る側は、募集している団体の事務所に送ることで作業は完了します。しかし、受け取った側は、そこからがスタートです。
  団体宛に送られた品物は、状況をチャックし、物によっては洗浄・消毒などのメンテナンスが施され、仕分け作業に続いて梱包されます。この作業は、通常、ボランティアの手で行われることが多いようです。
  仮に船で送るとすると、港まで何らかの輸送手段で運ばなければなりません。船が出るまで港の近くの倉庫で保管されることもあります。場合によっては、最初から送付先に倉庫が指定されることもあり、そこで仕分け作業等が行われます。
  船に載せて相手国の港に着いてもまだ道半ばです。それを運ぶ人の手配も必要です。目的の場所に着いたとしても、場合によっては現地で物を配布する人も確保しなければなりません。
  費用もかかります。船や航空便で送るにも、国内を移動させるにも輸送費が発生し、倉庫の保管料、コンテナ料金、現地での輸送費、場合によってはスタッフの 人件費なども必要です。その費用は船舶会社からの支援や募金などの支えられています。善意の物資であろうとなかろうと、送る手間ひまは、変わらないので す。》(P73)

つまり、(あなたの1万円)-(窃盗)-(着服)-(経費)=(貧困者の?円)になっているのです。

それは派遣村に弁当を届ける場合でも同じ。電車賃・ガソリン代・車両維持費・車レンタル代・交通インフラなど経費がかかっています。実際はあなたが別途払っているわけで、善意の活動だからといって無償ではないのです。

★話を本書に戻します。著者はエチオピアを訪ねる、その飢餓の地で見たものは、飢餓だけでなく寒さに苦しむ人々だった。医療行為も通訳もできない彼女がで きた仕事は、幼い少女に日本から送られてきた木箱から服を選んであげること。その箱の中身は僅かばかりの有用品と、信じられないほど多い女性用のスーツや 子供用のパーティードレスなどの無用品だった。一部の日本人は己がいらなくなったゴミを、貧困に喘ぐ人々に送りつけるのだ。

《エチオピアは物質に貧しく、日本は精神に貧しかった。せいぜい好意的に見ても、エチオピアの政治家は自国民をまともに食べさせるという基本的な能力にお いて貧しく、日本人は貧困とはいかなるものかという客観的知識において貧しかった。》(P43)。今もなお、奉仕活動という"真っ白な善意"は、一部の日 本人の"真っ白な脳ミソ"によって汚されているのだろうか。貧困に喘ぐ子供たちは、そのきらびやかなドレスに、一瞬でもこころ弾ませてくれただろうか。

★飢餓の子供たちは、あまり空腹を訴えないという。その口元に差し出されたお粥状の食べ物を、じっと見つめることが多いという。《エチオピアで聞いたもっ とも心に残る話は、日本人の看護婦さんがマッチ棒のように四肢の痩せた子に「もうちょっと待ってね。もうすぐ食べ物をあげますからね」と言うとそこ子は、 「食べ物はいりませんから、毛布をください」と答えたという話である。臨終が近いのであろう。消化の能力ももうとっくに退化して、ただの生命の残り火があ まりにも弱くしか燃えないのが辛かったとしか思えない。》(P23)

★ボリビアの田舎での話。子供たちは家ではほとんど食べていない、だから給食を出せば学校に来てくれるのではと著者は考えた。だいたい50円でできる給食、食 器は皆がめいめい持ってくる。《私が様子を見ていると、一人の子供がお皿を大切そうに持って、こぼさないように気をつけながら、校庭を横切って反対側の木 立に行くのが見えた。そこには大体同じくらいの年の三人の少年が遠慮がちに立っていた。先生に聞いてみるとそのうち二人は兄と弟、もう一人は友だちなのだ という。少年は自分がもらった給食を毎日身内や友だちにも分けて食べさせて、彼らを養っていたのである。
  十歳かそこらの「小さな父」は日本にはほとんどいない》(P25)

ボクは大人になったが父ではない、だれかを助けた記憶もない。「小さな父」が「小さな子供」でいていいために、今日ボクは何をすればいいのですか?そうだ、次の食 事を一品減らし家族と本書の話をしてみよう。貧困を取り上げている書籍を順に読んでいこう。地域の噂話をバカにせず、悲しみの綻び(ほころび)を 探してみよう。ボクが暮らすこの町にも、貧困の光景がきっとある。まずは知ることから始めてみよう、ここにある悲しみも、向こうにある悲しみも。

・産経新聞【正論】 曽野綾子 新しい年へ 2008.1.9
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/080109/trd0801090253000-n1.htm

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